校務システムについて
公立学校の校務支援システム導入特有の課題とは?自治体との兼ね合いや私立校との違い
校務支援システム導入における私立校と公立校の違い
校務支援システムの導入において、私立学校と公立学校はそれぞれ異なる条件や課題があります。
私立学校は、自前の財政資源を背景に柔軟な検討・判断やシステムのカスタマイズが可能であり、独自の教育プログラムに適したシステムを選定できます。
一方、公立学校は自治体の予算や規制に従い、導入プロセスが複雑化する傾向があります。
また、私立学校は最新の技術インフラが整備されている場合が多いのに対し、公立学校ではインフラの整備状況に差があり、導入時の課題が異なることがよくあります。
また、私立学校は保護者や卒業生の意見を反映しやすい一方で、公立学校では地域・自治体の教育方針に沿ったシステムが求められることが多いです。
このように私立と公立の違いを考慮して、各学校に最適な校務支援システムを選定することが重要です。
以下に、これらの点について詳しく説明します。
私立は学校単位だが公立は行政単位
私立学校は意思決定プロセスが比較的迅速であり、校長や理事会が直接的な決定を下すことができます。
ゆえに、新しい技術の導入において柔軟性が生まれます。
公立学校では、多くのステークホルダー(教育委員会、地方自治体など)の意見を取り入れる必要があり、プロセスが複雑化します。
このことは新しいシステムの導入を決定する際に、時間がかかる要因の一つになっています。
公立は成果と同時に前例や規範も求められる
公立学校は地域社会の一部として機能し、地域全体のニーズを反映した教育を提供する必要があります。
これは校務支援システムの導入や更新において、地域の意見を積極的に取り入れ、その地域に最も適した選択を行う必要があることを意味します。
したがって私立学校に比べて、システムの実用的な導入事例や安全性がより重視される傾向にあるといえます。
導入時に公立校ではじめに確認すべき点
①サーバーはどの単位で導入されているか
公立学校で校務支援システムを運用する際のサーバー選択は、その学校または学区の技術的要件、予算、セキュリティ要件、および管理上の優先事項に大きく依存します。
東京都の場合は区市町村、地方の場合には、県単位で導入されているケースが多いようです。
サーバーのタイプとしては、一般的に数年前からオンプレミスサーバーを用いているケースが多くなっています。
理由として学校や教育委員会側が完全な制御権をもち、データのプライバシーとセキュリティが強化されているからです。
最終的な選択はこれらの要因を総合的に検討し、教育委員会やIT部門との協議を経て決定されていきます。
②予算は最終的にどこから出ているのか
私立学校は学費や寄付金によって資金を調達していますが、公立学校は行政の予算配分に大きく依存しているため予算は限られており、教育委員会や地方自治体(議会)の承認が必要な場合がほとんどです。
そのため、新しいシステムの導入に時間がかかることがあります。

自治体によって差がある部分なので、教育委員会のどこが予算決定権をもっているか確認できるといいですね。
可能であれば、交渉ができるような状況かどうかも把握できると機能拡充などの交渉も視野に入りますね。
③ICT推進委員会・研究会の存在
自治体の研究会の中で、特に情報教育研究部が有益な情報をもっている場合があります。
そういった推進部会や研究会などとかかわりをもって導入のための情報収集をすることも有用です。
情報教育研究部とは?
自治体ごとに教科研究部という研究部会があります。
国語科、算数科といった部会の中で情報教育科について研究する部会があり、その特性上、ICT関連の情報に詳しい方々が多い部会になっています。
校務支援システム導入における自治体の規模による違い
地方は県単位で状況が異なる
小規模自治体は限られた財政的および技術的資源をもつことが多く、これが校務支援システムの選定や導入に影響を与える場合があります。
費用対効果が高く、サポートとメンテナンスが容易なシステムが好まれる傾向があります。
したがって財政状況により選択できるシステムが変わってくるため、県単位で導入状況が大きく異なっています。
東京は区市町村単位
東京都の場合は区市町村に管轄が分かれているため、上記のような状況が区市町村単位で異なっています。

自治体の規模によって校務支援システムの導入に関わる状況は異なりますが、すべての場合において重要なのは、システムが地域の教育目標とニーズに合致していること、そして教職員および児童生徒がシステムを有効に利用できるようにするための適切なサポートが提供されることですね。
公立校での校務支援システム導入のポイント
公立学校で校務支援システムを導入する際に考慮すべきポイントは多岐にわたります。
ここでは、成功へ導くための主要な要素をいくつか紹介します。
①自分の自治体のDXやICTについての方針や傾向を確認する
公立校での校務支援システム導入を検討する際、まず自分の自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)やICTに関する方針や傾向を確認することが重要です。
自治体ごとに異なるIT戦略や予算配分があり、それに基づいて導入できるシステムの範囲や特徴が大きく左右されます。
このため導入するシステムもこれらの基準を満たす必要があり、カスタマイズの自由度が低くなる場合があります。
教師、児童生徒、保護者、管理職など、すべてのステークホルダーのニーズを理解し、優先順位を付けることも重要です。
アンケート調査やミーティングを通じて直接的なフィードバックを収集することも必要になります。
予算面についての確認も重要です。
システム導入および維持管理に関連する全コストを詳細に分析し、予算計画に組み込む必要があります。
公立学校は政府補助金、地方自治体からの支援、またはパートナーシップを通じて追加資金を確保することができる場合があります。
②導入したい校務支援システムのメリットを整理する
システムの選定をする上で既存の技術インフラとの互換性を確認し、必要に応じてアップグレードや変更を計画できることは大きなメリットになります。
拡張性とカスタマイズ性を重視し、学校の将来的な成長や変化するニーズに対応できる、柔軟性のあるシステムかどうかも視野に入れておきましょう。

機能だけでなく、拡張性や既存のシステムとの互換性、また移行しやすさについても、選定の上で大事な観点になりますね。
③推進委員会や研究会と協働する
全校的に一斉に導入するのではなく、段階的に導入することで問題へ早期対応することができます。
どんな機能かだけでなく、どのようにステップを踏んで導入していくか。
その事例や情報を収集するためにも、推進委員会や研究会と協働して進めていくことで、リスクを回避しながら最適なシステムの導入へとつなげていくことができます。
④トライアルができる機会があれば手を挙げてみる
校務支援システムは、導入をする前に実際に操作をしてみたり、機能が想定通りに動作するかを試すことが難しい製品でした。
しかし、最近では導入前に「トライアル」のような形でお試し利用ができるケースも増えてきています。
ただ、トライアルは大規模に行うのは難しいため、③の推進委員会や研究会との協働の中でもし「トライアル」をやるという情報がわかったら、積極的にトライアルに関与することをお勧めします。
実際に使った人の意見は、良いシステムを選ぶためにも重要ですし、ほとんどの場合において比較対象が「今使っているシステム」との比較になってしまうと、どうしてもクラウド型のような新しいタイプの製品にたいしてイメージが湧きにくいものです。
「まずは触ってみる。」これもとても重要な考え方です。
まとめ
公立学校での校務支援システムの導入は、これらの重要なポイントを慎重に考慮することで、学校運営が大幅に効率化されるだけでなく、児童生徒の学習成果のさらなる向上に効果を発揮します。
そして、自治体や学校のニーズに適した校務支援システムを選択することや機能をカスタマイズしていくことが、児童生徒一人ひとりに対する個別支援の強化など、多くのメリットをもたらすことにつながります。

公立校に勤務されている先生方は、異動して自治体が変わる度に新しいシステムに慣れなくてはいけません。
同じシステムであっても契約によって、使える機能が違うこともあります。
システムに慣れるまでの負担は決して軽くないため、本当であれば統一してほしいところです。
校務DXによる改革で、そういった部分も解消されそうですが、いずれにせよ導入される校務支援システムの重要度は極めて高いですね。