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校務支援システムを導入するには?手順と準備しておくべきもの

投稿日:2025/06/09 更新日:2025/06/09

校務支援システムの導入には、相当な労力とある程度の予算が必要です。
導入を成功させるためには、事前の入念な計画と準備が不可欠です。
ここでは、どのような視点で何を準備すれば適切に校務支援システムを選定・導入できるかを解説します。

なお、文部科学省は校務DXを教員の働きやすさにつながる重要な基盤と位置づけ、令和6年には校務DX推進のKPIを設定しており、これらも踏まえた取り組みが求められます。

学校現場でも校務支援システムの大切さは分かっていますが、専門的な知識や情報を持っている先生が少ないので、どうしても現状あるシステムの中でやりくりしてしまう実情がありますよね。
もっと効率的なシステムがあるなら誰もが導入したいと思っていますが、具体的にどうしたらいいのか分からない学校や先生も多いと思います。

校務支援システムの導入手順

タイプによる導入プロセスの違い

校務支援システムには、大きくクラウド型とオンプレミス型があります。
両者の導入プロセスには違いがあるため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

クラウド型

〔セットアップと展開〕
クラウドプロバイダーがシステムをホストするため、サーバーなどのインフラ設定が不要で、迅速に導入可能です。

〔コスト〕
初期費用が低く、サブスクリプション(定額料金)ベースで運用できます。

〔メンテナンスとアップデート〕
提供事業者側でシステムを管理するため、ユーザーは常に最新の機能やセキュリティ更新を自動で受け取ることができます。

オンプレミス型

〔セットアップと展開〕
自治体や学校のサーバールームに専用のハードウェアを設置してシステムを構築するため、導入に時間と多額の費用がかかります。

〔コスト〕
初期費用が高く、インフラ設備の維持管理にも継続的なコストが発生します。

〔メンテナンスとアップデート〕
自治体や学校自身でシステムを管理するため、アップデート作業の実施やセキュリティ対策を自ら行う必要があります。

クラウド型迅速な導入が可能で、運用コストの見通しも立てやすい一方、オンプレミス型は高度なカスタマイズ性データを完全に自前で管理できる利点があります。

現在、国はクラウド活用を前提とした校務DXの推進を掲げており、最終的な選択は学校のニーズや予算に加えて、こうした方針も踏まえて検討する必要があります。

これらを踏まえ、以下の導入手順を参考にしてください。

①校務支援システムを選定する

校務支援システム導入の第一歩は、自校のニーズに最も合致するシステムを選定することです。
市場には多様なシステムが存在し、各システムは独自の特徴や機能を持っています。

選定プロセスでは、必要な機能、使いやすさ、予算、サポート体制、他システムとの連携などを総合的に評価し、比較検討することが重要です。

特に手作業の重複を減らせるかクラウド対応かといった点は、国が提示する校務DXの目標(例:不合理な手入力作業の一掃)とも関連するため、慎重に確認しましょう。

②自治体内や校内で上申・意思決定する

システム導入には教育委員会、校内の多くの関係者の理解と合意が必要です。
提案時には、教育の質の向上、業務効率の改善、コミュニケーションの活性化**、教職員の働き方改革への寄与**など、導入によるメリットを具体的に示します。
その上で、教育委員会や校内で会議やプレゼンテーションを行い、計画を上申します。

この際、関係者が抱える不安や疑問を解消するために十分な情報を提供し、納得を得ることが重要です。

また、国の方針に沿った取組であることを示すと、意思決定がよりスムーズになるでしょう。

③システムの要件やプロジェクトの前提を整理する

導入前に、システムの要件定義プロジェクトの前提条件を明確に整理します。
具体的な使用目的、期待する効果、必要な機能、データ移行の要否、既存システムとの連携などを洗い出しましょう。

この段階で詳細に計画を立てることが、導入プロセス全体をスムーズに進める秘訣です。

なお、システム導入が学校全体の戦略や国の教育DXビジョンと整合しているかも確認すると良いでしょう。

④システム会社とプロジェクトをキックオフする

選定したシステムの提供会社と正式に契約を締結した後、プロジェクトのキックオフミーティングを開催します。
ここではプロジェクトの目標設定、役割分担、スケジュール計画など基本的な枠組みを関係者全員で確認します。

プロジェクトの成功には、学校側と提供会社側双方の密接な協力と円滑なコミュニケーションが不可欠です。

⑤要件定義とスケジューリングを行う

システム導入における次のステップは、要件定義スケジューリングです。
この段階でシステムの具体的な要件を詳細に定義し、導入作業のスケジュールを策定します。

効果的な要件定義によって、システムが学校のニーズに適合していることを確認でき、後工程での調整や変更を最小限に抑えることができます。

(※)要件定義:システム開発・選定において、利用者や関係者のニーズ・要求を明確にし、それを基にシステムの機能や仕様を具体化するプロセスのこと。

⑥システム会社と並走してシステムを導入する

システムの導入は、提供会社と緊密に協力しながら進めます。

インストール作業、データ移行、システム設定の調整など必要な作業を段階的に実施します。

このプロセスでは、定期的な進捗共有や問題発生時の迅速な対応が重要です。
多くの場合、提供会社の経験に基づく標準的な対処で対応できますが、要求する機能によっては個別の対応が必要になる場面もあります。

また、実際の運用環境で十分なテストを行い、問題がないことを確認してから本格稼働に移行します。

⑦導入後の校内の教育やサポートを行う

システム導入後は、教職員への教育サポート体制の整備が不可欠です。

効果的な利用方法のトレーニング、マニュアルやFAQの提供などを通じて、教職員がシステムを支障なく活用できるよう支援します。

また、システム利用に関するフィードバックを定期的に収集し、必要に応じて改善を行うことも重要です。

スケジューリングを含めて具体的に説明してくれることで、イメージが明確になってきますね。
やはりサポート力は欠かせないポイントだと思います。

校務支援システム導入のための上申のポイント

システムの魅力をアピール

校務支援システムの導入提案時には、その魅力やメリットを明確に伝えることが重要です。

具体的には業務効率の向上、教育品質の改善、コミュニケーションの活性化、教員の負担軽減など、システム導入による具体的な成果を示し、関係者の理解と支持を得ます。

実績や成功事例を活用

全国の自治体や他校での導入実績や成功事例を紹介し、校務支援システムの効果を具体的に示します。
成功事例によってシステム導入の現実味と有効性を伝えることで、関係者に安心感を与え、導入への前向きな意思決定を促します。
(文部科学省が公開している「校務DX」事例集等も参考になります。)

円滑にコミュニケーションする

導入提案では、懸念や疑問をもつ関係者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。
提案者は関係者の質問に明確かつ具体的に回答し、不安を取り除くことで計画への理解と合意形成を図ります。

この大きな関門を越えるにあたって、一人ではどうしても不安になってしまいますよね。
この上申についても、親身になって相談に乗ってくれるシステムを選んでいくことが大切ですね。

校務支援システム導入にあたって準備するもの

システム導入の前提条件

導入前にシステムの選定基準、導入の目的、期待する効果などの前提条件を整理し、明確にしておくことが重要です。
これによってプロジェクトの方向性を正確に定め、円滑な導入プロセスを確保できます。

また、クラウド型システムを導入する場合は、校内ネットワーク環境やセキュリティポリシー(クラウドサービスを利用可能なものに更新済みか)など、環境面の準備状況も確認しておきましょう。

システム導入の目的とニーズ・目標

導入の主な目的や具体的なニーズを明確にし、達成すべき目標を設定します。
これらはシステム選定や導入プロセスの指針となり、期待する成果を実現するための基盤となります。

目標設定にあたっては、後述するように、具体的な数値目標を含めておくと効果的です。

予算とリソース

導入に必要な予算を確保し、プロジェクト遂行に必要な人員などリソースを準備します。
予算の明確化は、プロジェクトの実現可否や範囲の調整に不可欠です。

イニシャルコスト(初期導入費用)とランニングコスト(運用・保守費用)の両面で、どの程度の予算が割けるかを把握しましょう。
また、システム運用の主担当となる人員も欠かせません。

近年、都道府県単位で次世代型校務システムを共同調達し帳票様式を統一するといった動きもあり、こうした取り組みに参加すればコストや負担を分担できる場合もあります。

導入スケジュール

導入スケジュールの設定は、プロジェクト管理上の重要なポイントです。

計画時には学校行事の予定や試験期間などを考慮し、システム導入作業やトレーニングに適した時期を選定します。
このプロセスでは、関係者全員で無理のない現実的なタイムラインに合意することが大切です。

必要に応じて、国や自治体のDX推進計画における目標時期(例:年度末までにクラウド移行完了など)も踏まえてスケジュールを調整すると良いでしょう。

上申にあたっての説得ストーリー

上申の際には、導入の必要性やメリットを効果的に伝える説得力のあるストーリーが求められます。

そこでは自校や教育委員会が直面している課題、それを解決する校務支援システムの機能、導入による具体的な改善点や将来のビジョンなどを盛り込みます。
実際のデータ成功事例を引用することで理解を深め、賛同を得ることができます。

さらに、この取組が国の掲げる教育DX推進目標にも合致していることを示せれば、より説得力が増すでしょう。

関係者の参加とコミュニケーションの確立

校務支援システムの導入には、多様なステークホルダーの協力が欠かせません。

プロジェクトの初期段階から関係者を巻き込み、意見や要望を収集することで、より幅広いニーズに対応したシステム選定が可能になります。
また、定期的に打合せや情報共有の場を設けてプロジェクトの進捗を見える化し、関係者間のコミュニケーションを促進します。

サポート体制の整備

システム導入後の円滑な運用を支えるには、充実したサポート体制が必要です。

提供会社による技術サポートの内容を事前に確認し、必要に応じて教育委員会や校内でのサポート体制も構築します。
教職員が直面しうる問題に迅速かつ的確に対処できる体制を整えることで、システムの利活用促進と満足度の向上が期待できます。

どんなことでも事前の準備が大切ですが、何を準備したらいいのかが分からないと困ってしまいますよね。
校務支援システムの導入は初めてのパターンが多いと思いますので、しっかりと確認できることが選定のポイントの1つになります。

校務支援システムの導入目標設定

導入目標があることでシステムの成功が決まる

校務支援システム導入を成功させるには、明確な目標設定が欠かせません。

導入にあたって具体的な目標を設定し、それらが長期的な学校の戦略やビジョンとどう連動するかを検討します。
目標はSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性が高い、Time-bound:期限が明確)の法則に基づいて設定することが望ましいでしょう(詳細は後述します)。

目標設定のステップとプロセスを設定

目標設定は現状の課題分析から始まり、必要な改善点を明確にすることからスタートします。
この過程では、教職員はもちろん、可能であれば生徒や保護者からの意見も積極的に取り入れると効果的です。
分析結果を基に、達成したい具体的な成果を定義し、それを実現するための計画を立案します。

関係者全員が目標に対する共通理解を持ち、その達成に向け協力する体制を築いておくことも重要です。

SMART目標を活用

SMART目標はSpecific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性が高い)、Time-bound(期限が明確)の5つの観点で目標を定義する方法です。

このフレームワークを使って目標を設定することで、実現性が高く評価可能な目標を立てることができます。

例えば、「1年以内に教職員の業務時間を20%削減する」といった具体的な目標がそれにあたります。
また、「令和7年度までに校内のFAX送信と押印による決裁をゼロにする」など国の掲げるデジタル化目標に沿った指標を組み込むこともできます。

目標の達成度を評価する

システム導入後は設定した目標の達成状況を定期的に評価し、プロジェクトの進捗を確認します。
その際、導入前後の業務効率の変化、教育の質の向上度、利用者(教職員)の満足度など、複数の指標を用いると客観的な評価が可能です。
評価結果に基づき、必要に応じて目標の見直しや追加の改善策を講じ、導入効果を最大化します。

目標設定の重要性を周知する

明確な目標設定は、校務支援システム導入の成功に不可欠です。

この重要性を関係者全員で共有し、理想的な協力体制の下で目標達成に向けて努力する風土を醸成することが大切です。
設定した目標に基づく取り組みを継続することで、学校や教育委員会といった関係機関全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進し、より良い教育環境の実現につなげていきましょう。

目標を設定することでプロセスが見えてきます。
もしかしたら、重要なミッションを託されている方も少なくないのではないでしょうか。
数値化することで信頼度を高めることができ、自分にとっても安心できるポイントになってくるはずです。

まとめ:導入前の準備から周囲を巻き込み、未来を見据える

導入後の混乱を防ぎ、良好な結果を得るためには、導入前から可能な限り関係者を巻き込み、合意形成を図っておくことが大切です。

また、後になってリソースやスケジュールの変更が生じればシステム導入に大きな影響を及ぼすため、事前の綿密な計画策定が欠かせません。

校務支援システムの導入はまさに「段取り八分」の心構えで、入念な準備が成功のカギを握ることになるでしょう。

著者紹介
ジョー先生 教員

元公立校教員で、ICT担当としての教員歴10年以上。自治体の教育研究会の情報教育部にも所属。校務支援システムは30個以上を現場で比較検討経験あり。教育関連書籍の執筆・出版経験あり