校務システムについて
校務DXとは何か?GIGAスクール構想と学校教育のデジタル化
校務DXの基本概念
校務DXとは、デジタル技術による学校運営の変革
「校務DX」とは学校業務のデジタルトランスフォーメーションのことで、授業や学習指導以外の事務・運営をICTで効率化・最適化する取り組みです。
具体的には紙帳票の電子化・ペーパーレス化やデータ一元管理、オンラインによる連絡網の整備、各種業務支援ツールの導入などが該当します。
こうしたデジタル化により情報共有の速度と正確性が向上し、より迅速で的確な学校運営が可能となります。
またFAX送信や押印といった旧来の手続きを廃止することにもつながり、政府は2025年度までに全校でそれらを廃止する目標を掲げています。
(参照)学校におけるICT環境の整備・運用について
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1421443_00002.htm
教育現場の効率化と教職員の働き方改革を実現する
校務DXの重要な目的の一つは、学校の業務プロセスを効率化して教職員の柔軟で安全な働き方を可能にすることです。
例えば「校務系システム」(校務支援システム)の導入により教員を煩雑な事務作業から解放し、児童生徒一人ひとりに向き合う指導の時間を生み出すことができます。
このようにデジタル技術の活用で教員の長時間労働是正につなげることは国も重視しており、校務DXは教職員の働き方改革に寄与すると位置付けられています。
(参照)GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~
https://www.mext.go.jp/content/20230308-mxt_jogai01-000027984_001.pdf

学校現場では、校務DXについてよく知らないという先生も実はたくさんいます。
このような基本的概念から丁寧に説明していくことが大切ですね。
GIGAスクール構想との関連性
1人1台端末を目指す政府のビジョン
GIGAスクール構想は全国の児童生徒に1人1台端末と高速ネットワークを整備する政府ビジョンです。その実現によって教育現場のICT環境が飛躍的に向上し、校務DX推進の土台ともなりました。
文部科学省も「ICTは『個別最適な学び』と『協働的な学び』の充実に不可欠なツールであるとともに、教師の長時間勤務を解消し働き方改革を実現する上でも極めて大きな役割を果たしうる」と位置付けています。
実際、校務DXは個別最適な学び・協働的な学びの充実を下支えしつつ、教員の働きやすさにもつながる基盤とされています。
(参照)GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~
https://www.mext.go.jp/content/20230308-mxt_jogai01-000027984_001.pdf
具体的な施策として、教職員用PCを授業用・校務用で一体化し校務システムをクラウド化することで、場所にとらわれず校務が行える「ロケーションフリー」な環境整備を目指す動きが進んでいます。
**これはGIGAスクール構想で配備された端末とネットワークを活用する取り組みであり、文部科学省も各自治体の進捗状況をダッシュボードで「見える化」して推進しています。
文部科学省はチェックリストでDXを指標化
文科省は「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」というリストを作り、全国の公立小中学校に対して統一的な調査を実施しています。
文部科学省:GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_02597.html
このようなチェックリストも活用しながら、学校ごとに現実としてどの程度校務DXが推進されているかを計測し、そのギャップ解消のために必要なICTツールや校務支援システムを検討していくことが望ましいといえます。

実際学校ごとに状況は違うので、こういうチェックリストがあるとありがたいですよね!
校務DXの現状
紙ベース作業の依存度が高い
「FAXだけではない「昭和すぎる学校」4つの損、文科省が道半ばの校務DXを支援」
https://toyokeizai.net/articles/-/728131
東洋経済オンラインでは、現在の学校の姿が「昭和すぎる」としてセンセーショナルな記事が掲載され話題を呼んでいます。
多くの学校では依然として紙ベースの作業に大きく依存しています。
出席簿の記入、試験の採点、通知表の作成など、多くの日常業務が紙とペンによって行われているのが現状です。
このような作業は時間がかかるだけでなく、情報の共有や更新にも制限があります。
デジタル化移行率はとても低い
日本の学校におけるデジタル化の移行率はまだ低く、校務DXの実現に向けた課題が多く残っています。
具体的な状況については、以下のデジタル庁が公開する「校務DXの取組に関するダッシュボード」で確認することができますが、一例を挙げると以下のようなものがあります。
最新の調査では、以下のような状況が明らかになっています。
職員会議のペーパーレス化は70%以上が実施済み
保護者との連絡のデジタル化率は約40〜45%
保護者面談のオンライン化は約9%と低水準
このように、校務のデジタル化は進展しているものの、特に保護者対応などの領域では依然として紙ベースの運用が根強く残っています。
(参照デジタル庁「校務DXの取組に関するダッシュボード」)
https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/school-affairs-dx
こうした取り組みが遅れている理由として、多くの学校でICT設備や支援する人材の不足、デジタルツールの活用に対する理解不足が挙げられます。
また、教職員のデジタルスキルの向上やセキュリティ対策の強化も、デジタル化を進める上での重要なポイントです。

デジタル化が便利で効率的なことは周知の事実ですが、紙媒体の取り回しのよさがあることも確かですよね。
しかし、校務PCと学習用PCの一体化が進められることで、紙媒体の必要性は減少していくはずです。
学校現場での理解と浸透を含め、デジタル化にはその施策の進行度合いが大きく関わってきますね。
校務DXはなぜ必要なのか
リアルタイムでの情報共有が当たり前の時代
現代社会では、情報技術の急速な進化とともに、リアルタイムでの情報共有の重要性が高まっています。
学校運営においても教職員、児童生徒、保護者間での迅速な情報共有が求められていくと考えられます。
特に保護者については、普段の仕事や生活の中にスマートフォンやパソコンなどが深く浸透しており、相対的にデジタル化が遅れている学校との情報共有がアナログな手段に限定されがちです。
このような状況に対して不満を持っている人は多いと考えられます。
校務DXはこうした保護者とのコミュニケーションを効率化することに非常に役立ちます。
特に、クラウドを活用することで、保護者のスマートフォンを通して学校に欠席の連絡を入れたり、学校からの連絡事項をどこでも確認できるなど、大きな効果が期待できます。

毎日のように行う出欠席の連絡は、特に保護者からも喜ばれるのでまだ実現できていない場合は早期に検討したいところですね!
持続可能な教育システムへの転換
クラウドなどのデジタル技術の活用は、教職員、児童生徒、保護者間での情報共有をスムーズにするだけでなく、災害や緊急事態が発生した際にも、オンラインでの授業継続が可能となり、教育の機会損失を最小限に抑えることができます。
実際、東日本大震災時には被災校の約40%が成績や名簿などデータを喪失したとの報告(平成24年版情報通信白書」(総務省)があり、非常時に備えたデジタル化の必要性が痛感されました。
クラウドへの移行が進めば、避難所や仮設校舎からでもクラウド上の校務システムにアクセスして生徒の安否確認や校務継続が可能となり、学校の復旧・継続性を高めるメリットがあります。

指導要録など法律で保存が義務付けられている帳票は、万一紙のデータが喪失したとしてもクラウドから復元できれば安心ですね
校務DXのメリット
学校運営の効率化・運営コストの削減
校務DXにより、紙ベースの文書作成や情報共有のプロセスがデジタル化されることで、学校運営の作業効率が大幅に向上します。
また、印刷コストや資料の保管スペースなどの物理的なコスト削減にもつながることは、大きなメリットです。
迅速かつ正確な意思決定の実現
デジタル化されたデータを基にした分析により、教育機関の意思決定プロセスが迅速かつ正確に行われるようになります。
例えば児童生徒の出欠席の情報もリアルタイムでのデータ共有や更新が可能となり、家庭への連絡の判断など学校組織として速やかな意思決定が促進されます。
情報共有の円滑化
クラウドツールの積極的な活用によって、教職員や校内・校外の学校関係者、教育委員会職員とのコミュニケーションの迅速化や活性化が可能となります。

世界上位の教育水準、教育環境と比較し、日本の教育の未来も考えていきたいですね。
校務DXが目指す内部の効率化と透明性
デジタルツールを活用した業務プロセスの最適化
デジタルツールの導入により、学校運営の各業務が効率化されます。
児童生徒管理システム、経理システム、オンライン出席管理など、さまざまな分野でのデジタル化が進められています。
これらのツールを活用することで、時間を要する作業の自動化や効率化が可能となり、教職員が本来の教育活動により集中できるようになります。
意思決定プロセスの透明性向上による信頼性の確保
デジタル技術を利用した情報の共有と分析により、学校運営の意思決定プロセスの透明性が高まります。
教育機関内で共有される情報の量と質が向上することで、関係者間の信頼関係が強化され、より効果的なコミュニケーションが実現します。
データ駆動型意思決定の強化
校務DXでは、収集されたデータを活用して、より精密な意思決定が可能になります。
児童生徒の学習状況や教育成果の分析を通じて、教育プログラムの改善やカリキュラムの最適化が行われます。
データに基づく意思決定は、教育の質の向上に直結します。

これまでは各所で行われていた作業や確認が一元化され、透明性をもつことで、より迅速に正確な判断ができることは大きなメリットですね。
まとめ
校務DXは、これまでの学校が抱えるさまざまな課題を解決する可能性を秘めています。
校務DXのメリットには教育内容の変革や遠隔の授業といった分かりやすい成果もありますが、特に内部的な業務プロセスの改善や意思決定の可視化といったプレーンな部分がより重要です。
この部分のメリットを現実にするためには、その中核を担う校務支援システムの選定に留意する必要があります。
本当に自分の学校の状況に即していて、運用やカスタマイズがしやすいものか、アフターサポートが充実しているかなどの多面的な観点で評価し、選定していくことが求められます。