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次世代の校務デジタル化(DX)とは何か?文科省の推進事業を徹底解説

投稿日:2026/09/21 更新日:2026/09/21

次世代の校務デジタル化(DX)とは

働き方改革、学校経営・学習指導の高度化、レジリエンスを伴った新しい校務DX

”令和5年3月、文部科学省は「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」での議論を提言としてとりまとめ、アクセス制御に基づくセキュリティを前提としたネットワーク統合、パブリッククラウド環境での校務支援システム、汎用クラウドサービスの活用等を通じて、教職員の働き方改革や学習指導・学校経営の高度化、レジリエンス向上を実現する次世代校務DXの姿を示した。”

次世代の校務デジタル化(校務DX)とは、学校の事務作業や管理業務をデジタル技術を活用して効率化し、教職員が本来の教育活動により集中できる環境を整備する取り組みです。

上記の引用文にあるように、校務DXの進展により教職員が事務作業にかける時間を減らし、児童・生徒と向き合う時間を増やすことが主な目的です。

そして、校務支援システムの標準化によって、教育機関全体の効率性向上を図ります。

参照サイト:次世代の校務デジタル化推進実証事業(令和5年度実施)|文部科学省

次世代の校務デジタル化を支えるICT環境に係る5つの要素

次世代の校務デジタル化を支えるICT環境には、以下の5つの要素があります。

ア:ネットワーク統合

学習系システムと校務系システムを、インターネット経由で利用できるようなネットワーク環境を整備すること。

イ:校務支援システムと周辺システムのクラウド化

校務支援システムに加え、校務用ファイルサーバ・NASなど、校務処理に必要な周辺システムをクラウド化すること。

ウ:教職員端末の1台化とロケーションフリー化

教職員が1台の端末で校務支援システムや周辺システムを利用できるようにし、学校の内外を問わず業務を行える環境を整備すること。

エ:ゼロトラストによるセキュリティ対策

校務系・学習系システムについて、アクセス制御を前提としたセキュリティ対策を講じること。

オ:ダッシュボード整備・データ連携

校務系データや学習系データの連携を見据え、学校のさまざまなデータを統合・可視化するダッシュボード環境を整備すること。

5つの要素を備えたICT環境を整備することによって、以下のようなことが期待できそうです。

効率化と負担軽減

教職員が校務処理を1台の端末で効率的に行い、場所を問わず業務を遂行できるため、業務の負担が軽減されます。クラウドを活用することでデータの共有や管理が容易になり、校務にかかる手間を削減できます。

セキュリティの向上

ゼロトラストによる強固なセキュリティ対策により、データの安全性が確保され、重要な校務情報や個人情報の漏えいリスクが低減されます。

柔軟な教育環境の実現

ネットワーク統合により、学習系と校務系システムをシームレスに利用でき、場所や時間にとらわれない柔軟な教育・校務運営が実現できます。

教育データの有効活用

データ連携によって、児童生徒の学習データや校務情報が統合され、個別指導や教育の質の向上に役立てることができます。

次世代の校務デジタル化の実現に必要なこと

①「ツール」の導入

次世代の校務デジタル化を実現するためには、校務支援システムや周辺システムをクラウド化し、汎用クラウドツールの活用が重要です。

それができれば、教職員が場所にとらわれず、どこでも柔軟に業務を行える環境(ロケーションフリー)が実現します。

また、ダッシュボードを整備し、校務系データと学習系データの統合・可視化すれば、学校運営や教育活動がより効率的になります。

【主なツールの例】

  • Google Workspace for Education:ドキュメント作成、スプレッドシート、カレンダー、ドライブなど、教育向けに最適化されたツールセット。
  • Microsoft 365 Education:Word、Excel、Teamsを活用して、生徒や教職員が協力してプロジェクトに取り組むことが可能。
  • ZoomやMicrosoft Teams:オンライン授業や会議に最適なビデオ会議ツール。
  • Google Drive:ファイルのクラウドストレージとして、資料の共有やアクセスが容易。

これらのツールを活用することで、教育現場のデジタル化と効率化を加速させることができます。

②「ルール」の改訂・整備

デジタル化を進めるにあたり、従来のルールや規則が業務変革の障壁となることがあるため、これらのルールを改訂し、新たに整備する必要があります。

例えば、ネットワークの統合やゼロトラストセキュリティ環境に対応した情報セキュリティポリシーの改訂、また、押印やFAXの廃止に向けた規則の見直しなどです。

※ルールや規則を策定・改訂する場合、以下の点に注意が必要です。

セキュリティリスクへの対応

ネットワーク統合やゼロトラストセキュリティを導入する際、現行の情報セキュリティポリシーを見直し、新たなリスクに対応できるルールを策定する必要があります。

具体的には、アクセス権限やデータ暗号化、認証手続きの強化が重要になります。

業務効率化と抵抗への対応

押印やFAXの廃止に関して、これまでの慣習に基づく業務の流れを変更することに対して、現場からの抵抗が予想されます。

デジタル化のメリットを明確にし、教育や研修を通じて理解を図ることが大切です。

ユーザーへの影響の考慮

新たなシステムや規則が教職員や生徒・保護者にどのように影響するかを慎重に評価し、適応を促進するサポート体制の構築が求められます。

段階的な導入とテスト

一度に大規模なルール変更を行うのではなく、段階的な導入を行い、テストを重ね、問題点を早期に発見・改善しながら進めていくことが大切です。

円滑なデジタル化と業務変革のためには、これらの点に注意しながらルールの改訂を行う必要があります。

③「マインドセット・スキル」の醸成・育成

次世代の校務デジタル化には、教職員のデジタルツールやシステムの使用スキルの向上が不可欠です。具体的には、システムの操作研修や、セキュリティ研修などです。

そして、校務デジタル化の効果を上げるためには、教職員のマインドセットの変革が必要です。デジタル化の意義を理解し、積極的に取り組む姿勢が一人一人に求められます。

以下の記事に具体例が載っていますので、参考にしてください。

参照ページ:校務支援システム導入後にやること マニュアル作成から成功のポイントまで

文部科学省の実証事業の概要

6つの推進事業と生成AI活用への展開

文部科学省は、校務系・学習系ネットワークの統合、クラウドを活用した校務処理、校務支援システムの機能強化、データ連携などを通じて、次世代の校務DXを推進しています。

令和5年度の「次世代の校務デジタル化推進実証事業」では、働き方改革、学校経営・学習指導の高度化、レジリエンスの向上といった観点から、校務情報化の課題解消を目指した実証研究が行われました。

主な事業は、以下の6つです。

事業Ⅰ
秋田県・山口県による次世代の校務デジタル化実現に向けたICT環境等の整備

事業Ⅱ
秋田県・山口県の伴走支援および教育情報セキュリティポリシーのガイドライン改訂支援

事業Ⅲ
次世代の校務デジタル化を支える校務支援システムの機能強化

事業Ⅳ
都道府県・政令指定都市による次世代の校務デジタル化実現に向けた計画策定に係る調査

事業Ⅴ
次世代の校務デジタル化に向けた実態調査と課題抽出に関する調査

事業Ⅵ
校務系・学習系データ連携に係る標準規格の策定等に関する調査

これらの事業は、ICT環境の整備、校務支援システムの機能強化、自治体における計画策定、実態把握、データ連携の標準化など、次世代の校務デジタル化を支える基盤づくりを中心に進められてきました。

さらに、令和6年度には「次世代の校務デジタル化推進実証事業」の一環として、生成AIを校務でどのように活用できるかを検証する実証研究も行われました。

この実証では、一般向けの生成AIサービスでは入力が難しい成績情報や出欠情報などの重要性の高い情報を、適切なセキュリティ対策を講じた環境で扱うことを前提に、教職員の業務効率化や教育活動の高度化につながる活用方法が検討されています。

実証地域は、埼玉県新座市、愛知県岩倉市、兵庫県宝塚市、沖縄県石垣市の4地域です。

各自治体の小・中学校の教職員や教育委員会事務局職員が利用できる実証環境を整備し、生成AIを活用した校務支援の可能性が検証されました。

実証システムでは、Webブラウザから利用できるチャットボット型の仕組みが構築され、教育委員会や学校が業務で利用しているデータを蓄積するためのデータレイクも整備されました。

生成AIの回答方法としては、LLMのみを用いる方法、RAGによって実証地域が所有する情報やデータレイク内の情報を参照する方法、インターネット上の情報を利用する方法の3パターンが用意されています。

令和7年度には、この流れをさらに進める形で「セキュアな環境における生成AIの校務利用の実証研究事業」が実施されています。

ここでは、生成AIの校務での活用に関する実証研究に加え、生成AIと校務支援システムのダッシュボード機能等との連携、校務支援システムへの生成AIチャットボット機能の搭載、教育現場の実態を踏まえた情報セキュリティ対策の調査研究などが進められています。

次世代の校務デジタル化は、ネットワーク統合やクラウド化、データ連携といった基盤整備の段階から、生成AIを活用して校務そのものを効率化・高度化する段階へと広がりつつあります。

事業Ⅰが目指すのは、クラウド活用を前提とした次世代校務DX環境

文部科学省の次世代の校務デジタル化推進実証事業Ⅰでは、秋田県と山口県を実証地域として、校務系・学習系ネットワークの統合や、クラウド活用を前提とした次世代の校務支援システムの整備が進められました。

従来の校務支援システムは、閉鎖系ネットワークやオンプレミス型の運用を前提としている場合が多く、校務用端末が職員室に固定されやすいという課題がありました。

そのため、自宅や出張先での校務処理が難しいことや、大規模災害・感染症流行時に業務継続が困難になることが課題として挙げられていました。

クラウド活用を前提とした次世代校務DX環境では、校務支援システムや周辺システムをクラウド化し、教職員が1台の端末で校務系・学習系システムを利用できる環境を整備します。

学校内外での校務処理がしやすくなり、教職員の働き方改革につながることが期待されます。

また、校務系データと学習系データの連携が進むことで、学校に蓄積されたさまざまなデータを統合的に可視化し、児童生徒の状況把握や学校経営の改善に活用しやすくなります。

一方で、校務情報には個人情報や成績情報など重要性の高い情報が含まれるため、クラウド化やネットワーク統合を進める際には、ゼロトラストの考え方に基づくアクセス制御や、自治体・学校の実態に応じた運用ルールの整備が欠かせません。

つまり、事業Ⅰで重視されているのは、単なるフルクラウド化ではなく、ネットワーク統合、クラウド化、端末の1台化、ロケーションフリー化、ゼロトラストによるセキュリティ対策、データ連携を組み合わせた次世代校務DX環境のモデルケースを示すことです。

参照サイト:次世代の校務デジタル化推進実証事業 成果報告書

まとめ

次世代の校務DXは、教育現場における事務作業の効率化と児童生徒への個別支援の強化を目指し、クラウド技術やICT環境を活用する取り組みです。

このDXの一環として、ネットワーク環境を整備し、校務システムをクラウドベースに移行できれば、教育委員会や学校間でのデータの共有がスムーズになります。

そうすることで、教職員が事務作業に費やす時間を削減し、児童生徒と向き合う時間が増えると期待されています。

特に、各種帳票や名簿の作成などの作業をクラウド化することで、自治体間のシステム格差を解消し、教職員の異動時にも負担が軽減されます。

今後さらに、押印やFAXの廃止といった徹底したペーパーレス化が進められ、2026年度からは次世代型校務支援システムへの移行が計画されています。

これらの変革によって、校務の一元管理と効率的な運営が実現できると考えられています。

このデジタル化を成功させるためには、クラウドサービスやデジタルツールの導入が必要です。

また、従来の業務フローや規則を見直し、ICT活用に対応したルールの整備も求められます。その上で、教職員がデジタル技術を活用できるよう、意識改革やスキル向上を図る取り組みが重要になります。

次世代の校務DXが教育現場で効果的に実施されていくために、本記事で紹介したような事業事例の報告・検討がなされています。校務システムの導入には、このような文科省の方針や取り組みをしっかりと把握しておくことが重要です。

著者紹介
ジョー先生 教員

元公立校教員で、ICT担当としての教員歴10年以上。自治体の教育研究会の情報教育部にも所属。校務支援システムは30個以上を現場で比較検討経験あり。教育関連書籍の執筆・出版経験あり